高知県経営品質通信

高知県経営品質協議会(KQN)の活動報告

未来工業は、コンセントの裏側のスイッチングボックスなど、電気設備資材・管材等の製造・販売を行う社員数約800名の中堅企業です。
同社の年間140日という休日数は、上場企業中でトップ。年末年始20連休、残業禁止、成果主義禁止、報告・連絡・相談禁止と、世の中の「あたりまえ」を大きく覆す経営方針のもと、年々業績を伸ばし続けており、全国の経営者から熱い注目を集めている企業です。

キーワードは「自立」した人財の育成

山田昭男相談役は4名の仲間と昭和40年に同社を創業。ライバルの大手企業に対抗するために現場の職人さんたちから支持される、使いやすい商品づくりに力を注いできました。現在の特許申請件数(年間)は大手企業に匹敵。スイッチングボックスの国内シェアは断トツの80%で、その秘訣はあらゆるニーズに対応できる豊富なラインナップにあります。同業他社では、採算ベースにのるかどうかで商品化を判断し、仕様を必要最小限に絞り込みます。同社では「お客様に喜んでいただけるかどうか」が判断基準。そのため、スイッチングボックスひとつをとっても、その仕様違いだけで85種類ものラインナップを誇り、その対応力がお客様をひきつけているのです。「いいものを安く」ではなく、本当に価値のあるものを世に出して「いいものを高く」買っていただくことが大切であると考えているのです。 そのモノづくりへの情熱は、現場の至るところに掲げられた「常に考える!」という標語に表れていました(写真参照)。

プロセスこそが会社の成長

社員が自分で考え、答えを出すというプロセスこそが会社の成長ととらえ、上司が部下から相談されても答えを教えることはありません。前述のとおり「ホウ・レン・ソウ」も禁止。あくまでも自分で考えて仕事を進めていくことを重視します。そのため、社員が失敗をしてしまうことも少なくないようですが、その失敗があってこそ本当の成長がある、と断言されていたのが印象的でした。これは、昨年のKQNキックオフセミナーでネッツトヨタ南国の人財育成について語っていただいた横田英毅氏とまったく同じ話であり、人財育成の核心と言っていいのかもしれません。 「日本の企業は減点主義が好きだが…取り組んだ、という事実を評価すべき」と山田相談役は語ります。そのひとつの仕組みとして紹介していただいたのが「提案制度」でした。提案の内容は自由。どんな提案でも提出するだけで社員に報奨金が支払われます。そして、その提案制度で改善された機械設備には「改善提案実施個所」という札が貼られ、それを見るたびに「考える」動機が生まれ、強い意識付けとなっているのです。

「小さな節約」と「大きな浪費」

同社の徹底した節約ぶりは有名。社内の壁には山田相談役の手書きで「小さな節約、大きな浪費」と書いた紙が貼られており、すべての蛍光灯からは不思議なヒモがぶら下がっています。これは、蛍光灯のスイッチにつながっていて、基本はすべて消灯。その場所を使う時に、必要な蛍光灯だけをつける、というルール。当然、外光の入らない廊下は真っ暗闇、コピー機は350人働く本社にたった1台だけ。使用する紙はもちろん裏紙という徹底ぶりです。「大きな浪費」というのは、たとえば5年に一度の海外への社員旅行。その費用は全部会社もちなのだそうです。始めた頃、会社が1週間以上も休みになるとお客様に迷惑がかかると心配した営業担当者がいたそうです。普通なら、交代制で行くとか、誰かが我慢して留守番をするといった常識的な解決策を考えるところですが、なんと、倉庫の合鍵を3千個作り、すべての取引会社に渡したというのです。製品が必要になったら勝手に入って勝手に持って行ってくれ、ということです。たしかに一見すると非常識な無駄遣いに見えますが、実はこうした徹底ぶりが社員や協力会社の心を揺さぶり「よしっ、この会社のために頑張ってやろう!」という気持ちをかき立てているのでしょう。

視察を振り返って

年間1万人もの人々が視察に訪れる未来工業ですが、2日間にも渡り視察に訪れたのは、我々KQNの視察団が初めてだったようです。初日の社内見学と山田相昭男談役の講話に続き、2日目の質疑応答の時間には営業・開発・総務の責任者にもご参加いただきました。ご用意頂いた2時間半にも及ぶ時間の間、参加者達から途切れることなく質問が続き、とても内容の濃い視察を行うことが出来ました。次年度もまた、このような視察研修の企画をしたいと考えております。